「あ、わりぃ…」
「私こそすみません。
あ、どうぞ」
佐山さんを先に通して、
私と飯田さんは部屋の中へ入った。
「竹本?」
ドアが閉まる前に
佐山さんが私の服の袖を掴んで、
呼び止めた。
「なんですか?」
「…あ、いや、何でもねぇ…」
何か言いたげだったけど、
何でもないって言われたし、
別にしつこく聞いたりはしなかった。
そして、翌日もまだ、
雨が降っていた。
「おい!飯田!」
「はっ、はい!」
「先週頼んでおいた資料、
まだか?!」
そうそう。
今日は片林さんがいる。
昨日までは出張でいなかったけど、
今日は事務所で内勤のようだ。



