だから、言えない



「村薗くんか!
おはよう」
「おはようございます」

いつもの笑顔で
先輩は飯田さんに向かってそう言ったけど、
なぜか声のトーンが暗い気がした。

どうしたんだろう?
私の気のせいならいいけど。

「あれ?
村薗くん、今日は直行じゃなかった?」
「えぇ、取引先を訪問する予定だったんですが、
担当の方がインフルエンザにかかったらしくて、
延期になったんです」

先輩が苦笑いした。

「そっかそっか。
それより、村薗くんも、
忘年会、お疲れ。
二次会の後、帰れた?」

飯田さんがそう聞いた。

「はい、タクシーで」

私は先輩の横顔を見つめた。
元気はなさそうだけど、
今日もかっこいいなぁ。

「そっか。
塚尾がべったりついてたから、
あの後、ホテルに連れ込まれたんじゃないかって
思ってたよ、あははは」

飯田さんが笑うと、
村薗先輩も、はははと軽く笑った。

「そんなわけないじゃないですか。
ちゃんと帰りましたよ」