だから、言えない



どうやら飯田さんは、
一階の倉庫から
箱を運んでいる最中だったようだ。

「重いですか?」
「ううん。全然」

飯田さんは箱を持ち直した。

「竹本ちゃん、
さっき塚尾が言ったこと気にしてる?」
「え?髪の毛の話ですか?」
「うん」
「いえ!大丈夫ですよ」

飯田さんが安心したように息を吐いた。

「僕は竹本ちゃんが、
見た目を気にしてないって、
思ってないからね」
「ありがとうございます!」
「明日、あの人が出張から
戻ってくるから、
塚尾もちょっとは
おとなしくなるね」
「そうですね」

両手が塞がってる飯田さんの為に、
部屋のドアを開けようとしたとき、
ちょうど誰かが
向こう側からドアを開けた。

「うわっ」
「あ」

佐山さんだった。