だから、言えない



俺はゆっくりと竹本の顔に近づいた。

そして、俺の唇が、
竹本の唇に触れそうになったとき、
俺はふと思い出した。

こいつが俺に初めて
弁当を作ってきてくれたときのこと。
嬉しかったあの瞬間のこと。
あの笑顔。

やっぱりだめだ。
裏切れねぇ。

でも、キスだけなら…

いや、キスしたら
その先止まらなくなる、
絶対…


俺はそのまま、
竹本の隣に勢いよく
仰向けに倒れこんだ。


「はぁ………はぁ……」

俺、何やってんだろ…
竹本が笑ってくれるだけで、
俺はいいんだ。
一緒にいてくれるだけでいいんだ。

竹本が知らない間にこんなことしたって、
意味なんかねぇ。


「もう、寝ろ」

そう言って俺は、
竹本に布団を掛けた。

「佐山さん…ひどい…」