だから、言えない



なにこいつ…
なんでこんなに優しいわけ?

やべぇ。
今すっげぇドキドキしてる、俺。
かっこ悪。

「自分で使えよ。
お前も濡れてんだろ。
風邪引くぞ」
「私は佐山さんが
使った後で大丈夫ですので。
使ってください」

そう言ってにこっと笑った竹本の顔に、
前髪から落ちたしずくが滴った。

あぁ、もう、こいつ。
なんでこんなに、
かわいんだよ!
その笑顔、
いちいちドキドキすんだよ。

くそ。

俺は竹本のタオルをつかむと、
そのまま竹本の頭にかけてやった。

「俺はいいってば」