「おう…お疲れ」
優はそのまま部屋から出て行った。
優…。
あいつはいつも
周りの人のことを気にしてて、
ほんとにすげぇやつ。
だけど時々心配になる。
あいつ、ちゃんと
自分のこと見えてんのか?
*
その日は大雨だった。
傘はさしてたけど、
風もあったから、
ずぶ濡れになって職場についた。
事務所の入り口で
ちょうど傘をたたんでる
竹本が目に入った。
「おはよ」
「佐山さん。
おはようございます」
「すげぇ雨だぜ」
竹本も顔や髪の毛が濡れていて、
なんか新鮮だった。
「佐山さん」
と言うと、
竹本は自分の鞄の中に
手を突っ込んだ。
「よかったら使ってください」
俺は目の前に差し出された
淡い黄色のタオルを見つめた。
「は?」
「びちょ濡れじゃないですか。
よかったらこれで
拭いてください」



