海の向こうで




「そっか、海華は知らなかったか。海はこの暴走族、『桜龍』の総長なんだよ」



といつの間にか後ろで見守っていた飛鳥が言った。



海が暴走族のトップだったなんて。



私と海は同じ父と母から産まれたはずなのにすごい差だな、なんて思う。



「海は昔から喧嘩が強かったみたいでさ。だから歳は下の方だけどすぐに幹部になっちゃって。で、それで総長まで登りつめたってわけ」



…知らなかった。



海のことについて今まで考えもしなかったし、そもそも名前さえ覚えていなかった。



そんな双子の片割れがこんなにカッコいいとも思ってもみなかったし、そしてこんなに大きな族をまとめているっていう事実に尊敬する。



なんだか私と天と地ほどの差を感じる…。



「海はすごいよな。オレも尊敬してる」



飛鳥さんがぽつりと呟いたのに、私は激しく同意した。