まだ何もできてないよ。
キスだってハグだって、まだまだし足りないよ。
おねがい、生きて…!
そうしてると、脇から119番通報をしているのが聞こえた。
「火事ですか、救急ですか」
と、落ち着きはらった声が聞こえてくる。
「…救急です」
「どうされましたか?」
「20代の男性が、車で跳ねられて倒れています」
「場所はどこですか?」
「〇〇町の△という交差点です」
「電話番号とあなたの名前を教えてください」
「000-000-0000、???です」
「分かりました。直ちに救急車がそちらに向かいます」
それを聞いていると、おじさんが汗を拭いながら私に言った。
「ごめん。交代してくれないか」
「あ、はい」
胸骨圧迫なんて授業で一回やったっきりだ。
だからあんまり覚えてないけど、でも今はやるしかない。
「真ん中あたりを強く押すんだよ。骨が折れるのは気にしないで、命が助かるんなら骨が折れたってなんだっていい。あんたがたどこさ、って心の中で歌いながらやるとリズムを取りやすいみたい」
とおじさんが話してくれる。
「そうそう、そこら辺。もっと腕を真っ直ぐにして。そう」



