「そうだねー。ま、大丈夫でしょ。俺と花梨ちゃんならさ。保健委員の時も、ちゃんとできたしね」

「そっかー。うん、がんばろうね」


 瞬くんは穏やかに笑っていた。

 そう言えばこの人、いつも優しく微笑んでいる気がする。

 毒気のない笑みっていうのかな。

 怒ることってあるんだろうか。

 なんだか他の男子よりも、精神的に一枚上手というか、大人の余裕があるように見えるなあ。

 それにしても、本当に遅くなっちゃったな。

 今日数学の宿題結構多く出ていたし、早く帰らないと。

 そう思った私が、自分の席で帰り支度をしていると。


「……ねぇ、花梨ちゃん」

「ん?」


 すでに帰りの準備を終えたらしい瞬くんが、鞄を担ぎながら私の席の近くへとやってきた。

 呼ばれて何気なく瞬くんに視線を合わせた私だったが、彼の様子に息を呑む。

 まっすぐな、まるで射貫くような強い視線を、瞬くんは私にぶつけていた。