「知ってる。そう言ってたよな」

「えっ? よく覚えてるね」


 たった一度、ぼそりとひとりごとのように呟いただけだ。

 暁斗はその時スマホを見ていて何の反応も無かった気もする。

 だからそんな些細なことを記憶している彼に、私は少し驚いたのだった。

 すると暁斗は、頬を少しだけ緩ませる。


「花梨が欲しがってるものなんだから、ちゃんと覚えておかなきゃいけないじゃん」

「え……」


 いつものように微笑んで当たり前のようにそう言う暁斗には、やっぱり私を幼馴染として大切だとしか、きっと思っていないんだと思うけど。

 それでもやっぱり私には、嬉しかったんだ。

 暁斗には恋愛感情がなかったとしても、私を特別扱いしてくれているような気がして。


「あ、ありがとう。食べていいの?」

「もちろん」

「……うん。いただきまーす!……あ、これおいしいー! 酸っぱいけど甘いよ! 暁斗も食べようよ」


 私に促されて、暁斗もグミを一粒食べる。


「ほんとだ。これ、うまいな。さすが花梨、見る目あるじゃん」

「いやー、それほどでも」