――しかし。


「でもさ、何度も言ってるけど私、暁斗のこと本当に好きだから。花梨は必要以上に暁斗に近づかないでほしいの」

「え……」


 その言葉には、刺々しさがあった。

 ――ニセモノのくせに、私の恋路を邪魔しないで。

 瑠璃は確実に私にそう言っていた。


「暁斗のこと、なんも思ってないならそうしてよね。友達なら協力してほしいし」


 どこかつっけんどんな言い方だった。


「あ、あの。私……」


 さすがに正直に言わなきゃ、と思った。

 そこまで言われてしまったら、自分の想いを言わないのは卑怯な気がしたから。

 だけど瑠璃はすでに私に背を向けていて、私が言いかけた言葉には気づいていなかったようだった。

 そのまま早歩きで自分の家へと帰って行ってしまった。

 私は大きくため息をついてから、自分の家の門をくぐる。

 毎日続いていた、暁斗との代わり映えしない偽りの日々。

 それが瑠璃の登場によって、大きな変化が起こりそうだった。

 そんなことを予感させる、今日という一日だった。