神社に寄ると、お参りをし、おじ様の元へ向かう。
脇に構えてある授与所で、おじ様は参拝客にお守りを渡していた。
「おう、ひとみちゃん。おかえりなさい」
「ただいま戻りました」
「学校はどうだった?」
「そうですね……。楽しかった、です」
言葉に詰まってしまった。
楽しかったのは本当。
影野さんたち、親切だったし。
でも……。
「あ、そうだ、お弁当! とてもおいしかったです。ごちそうさまでした」
「それはよかった。明日も楽しみにしてていいよ」
「わあ! 本当ですか! やった! その分、わたしも、神社のお掃除がんばりますね!」
やる気を十分にアピールしてから着替えてこようとすると、ストップをかけられる。
おじ様はおだやかにほほえんでいた。
「ひとみちゃん。そう不安がらなくていいよ」
「……っ」
「きみなら大丈夫」
「……なんで、」
「ん?」
「なんでわかったんですか……?」
声音も、表情も、明るくした。
たしかに喜びを感じていた。
それ以上にモヤモヤが大きく育っていた。
1週間、ずっと一緒にいた。
家のこと、神社のお手伝いの仕方、生活スタイル。
そのすべてを魁運が教えてくれた。
昨日までの日々は、魁運があたしに合わせてくれていた。
いろんな姿に触れても、きっと、魁運のことはまだ半分もわかってない。
「見ればなんとなくはわかるよ」
「み、れば……」
「みんな、ひとみちゃんのことが大好きだから」
木々が揺れおどる。
青い葉がこすれ、落ちていく。
蝉の亡き骸の上に、ひらりと。
「うちの息子も、不器用なりに想ってるよ」
あたしは力なく笑みをこぼした。



