「いたずらじゃ済ま……っうが!?」
「はーい、ちょっとどいてくださーい」
不意に男が足をすべらせ――正しくは、わざとすべらされ、みっともなく尻もちをついた。
倒れた男を容赦なく踏みつけ、小さな人影が軽快なステップを取りながら、こちらに近づいてくる。
ぼやけた視界に、ゆっくり、小さな人影の姿が反映されていく。
「お兄さん」
「……やっぱり、」
「たすけにきたよ」
あの女の子だ。
かくれんぼが大好きな、あの。
相変わらず目は見えないけれど、それでも十分わかるくらい、女の子は自信たっぷりに笑っていた。
「お兄さん、痛い? 痛いよね? ほんとはずっと、痛かったよね」
「……な、んで、」
「ここに来た理由?」
「……っ」
「やくそくしたから。わすれちゃったの?」
してない。
しなかったんだ。
敵わない、叶えられない、そう思って。
なのに。
「もうだいじょーぶだよ。今度はあたしがたすけてあげる!」
どうして、この子は。
「子ども……? ハッ、こんなガキが……!?」
父役のアイツがのそりと起き上がった。
不法侵入者が幼い少女だと知ったとたん、いきがって嘲笑を浮かべる。
「おいおい、お嬢ちゃん。だめじゃないか。勝手に入ってきて、意地悪したら」
「そう?」
「アハハ、そうだよ。いいかいお嬢ちゃん? 好き勝手するようなら、そこのお兄ちゃんみたいになっちゃうよ」
「ふーん?」
「アハ、アハハッ! ずいぶんとでかい態度を取るじゃないか!
……オレを怒らせるなよ?」
低すぎる沸点に触れ、男の形相が鬼と化す。
幼女相手に本気で脅すとか、ほんと、救いようがない。



