俺の周りだけ血の海だ。
コンクリートに赤くこすれた、薄汚い跡だらけ。
明日、従業員になんて言いわけする気だよコイツ。
自分で自分の首絞めてんぞ。ウケる。
俺も。
ウケてんな、コイツだけに。
何が笑えるんだろ。
いや、わかりたくねぇけど。
これでも、俺にしてはめずらしく、すげえがんばったよな。うん、がんばった。
包帯取れかけて、生傷は服で隠せなくなって。
反抗はせずに、できるだけ攻撃は受け流して。
何度腹を打撃され、何度地べたに倒れ、何度皮膚がめくられ肉が見えようとも。
がんばって、がんばって……耐えた。
がんばったよ。
だから。
「ハハ! ハハ……ハハハハッ!!」
――ゴスッ! バゴォッ! ッズザザァ!!
少し、休んでも、いいよな……?
ほら、少し。
少しだけだから。
寝たら、また、いつもどおり。
の、つもり。
――トントン。
「あ? なんだ?」
「……っ、?」
堕ちかけた意識を呼び止めたのは、クリアで無機質な響きだった。
殴る蹴るの、あの、いやな音じゃない。
安っぽいドアのほうからだ。
――トントン。
まただ。
こんな夜更けに、こんなさびついた工場に、ノック音……?
「誰だぁ?」
疑問より不審感が勝っていた。
音を聞き付けて警察がやってきたか? いやいやそんなわけが。
そんな父役の考えが、手に取るように汲み取れる。



