「わからないことがあったら、なんでも聞いてね」
「ありがとう!」
魁運の言葉のとおりだったよ。
影野さんはもちろん、クラスメイトみんな、いい人そう。
不登校だったあたしを腫れ物扱いしようとしてこない。
……あたしの目をしっかりと見ても、怖がらなくなるといいな。
「あ、それから、」
――ガラッ!
影野さんの声をかき消す、大きな音。
ざわめきが一瞬にして静まり返る。
教室の後方の扉から、つやめいた金色が覗いた。
あ……魁運だ……。
学校前まで一緒だったのに、なぜか魁運はホームルームが始まるぎりぎりにやって来た。
裏門からだと遠いのだろうか。
遠回りなら正門から来ればよかったんじゃ……。
まあ、でも。
ぎりぎりに来て、みんなの注目をかっさらっちゃうところ、すっごくかっこいい!
主役現る! て文字が見えた! あたしには見えたよ!
最っ高!!
「最悪……」
「来んなよ……」
……ん?
盛り上がってるの、あたしだけ?
「相変わらず、こえーな」
「俺、前の席とか無理……」
「息詰まる」
「サボってくれないかな……」
「関わりたくないよね」
あたしと周りの温度差に絶句した。