「いいんだ、俺は。これで。……いいんだ」
強がりじゃない。
これは、単なる、あきらめ。
ほんのちょっと、外がまぶしいだけ。
ふつうじゃなくても、にこにこへらへらしてれば、それなりに生きていける。
虐待はあれど、これまで最小最低限の生活を提供してくれてるし。
そのことには感謝してる。
一応。言葉だけな。
それ以上の気持ちはねぇよ。あるもんか。
外ではいい子に振舞ってやってんだ。それと等価交換しても、おつりが出る。
アイツら、まじでいっぺん、俺に感謝してほしい。
こんな生活も、あと半年。
卒業したら、義務教育もおしまい。
そしたら家を出てってやるんだ。
はじめはホームレスでもいいし、やばいヤツらと関わったっていい。
自分で稼いで、自分で暮らしていく。
自分らしく生きていく。
この地獄ともおさらばだ。
「……おっと、このまま寝ちまうとこだった」
あぶねぇ、あぶねぇ。
部屋着に着替えて、包帯も替えねぇと。
「あーあー、まーた青くなってら」
制服を脱いだ、その下。
素肌を隠すように巻いていた包帯をほどく。
あらわになった体には、ほとんど肌色はない。
赤。青。黒。黄緑。茶。
色とりどりできれいだろ? とか言ってみたりして。アハハ。笑えねぇよな。うん。
毎日毎日殴られ、蹴られな生活を送っていたら、いやでもこうなる。
古傷が治ってきても、また新しい傷がつく。
タバコを押しつけられたり、カッターで切られたり、花瓶を投げつけられたり、階段から落とされたり……。
日常茶飯事だ。軽く犯罪だよな。それでも生きてる俺ってすげー。
「今日は青アザが多いな……」
うげ、血も出てる。
やっと閉じてきた傷口だったのに。
痛いなあ。つらいなあ。
つっても、痛覚は死んだも同然なんだけど。
『お兄さんは?』
『え?』
『痛くない?』
そういえば。
あの女の子、心配してくれたっけ。
まさか……。
「いや、まさかな」



