「きゃああ…………っ、え?」
「……あ、れ……?」
「どう、して……」
突風が、起こった。
応援席をまとうように冷気が充満する。
それらは、あらゆる勢いを殺していく。
銃弾の軌道すらも。
「な、なんでだ!? どうなってやがる!?」
「あんたの攻撃は、何ひとつ、届かせないよ」
乱発された砲丸は、ひとつ残らず、応援席手前でブレーキをかけた。
地面に埋まった跡はあれど、誰ひとり、傷はない。
「は!? 届かせない? んなことできるわけが……っ」
「決めつけはよくないよ?」
幸いにも、ここは、負の感情のたまり場。
足も、影も、精気もない味方で、あふれ返ってる。
誰もが気づいていないだけ。
「ひ……っ、そ、その目、やめろ……!!」
「これは生まれつき」
血が騒ぐ。
きっとこれは、半分流れた、巫女の血。
「くっ……そ、……こうなったら!」
弾切れのピストルを投げ捨て、中年の男はふところから何かを取り出した。
ぎらつくソレは、針だ。
おそらく、毒が仕込まれてある。
……大して問題じゃあない。
「さ、佐藤、さん……!」
「あ、影野さん。今のうちに逃げな」
「で、でも、」
涙声に誘われ、応援席のほうへ振り向けば。
案の定、影野さんは大号泣。
転んでひざをケガしたから? え? ちがう?
ああ……ほんとに、ピュアな子ね。



