徐々に風が弱まっていく。
雲の切れ間から陽がこぼれ落ちた。
魁運の顔を覗きこむと、照らされた表情がどこかぎこちなく歪んでいる。
そんなところも母親そっくりだね。
「……あったかい、な」
「魁運だけにあったかいんだよ」
「そうかな」
「そうだよ。そういうものなの」
「……そう、か」
ぎゅう、と手と手の温もりを求め合う。
まだちょっと汗ばんでいるけれど、わるいことじゃない。
晴れやかにほほえめば、魁運の目尻から雫がひと粒、落っこちた。
きれいだね。
日の差す、その白い髪も輝いていて。
きらり、きらり、と。
スイレンさんの涙が降り注いでる。
「ひとみ?」
「ううん。……魁運、これからだよ」
「おう」
スイレンさん、あなたに逢えてよかった。
あなたの後悔も想いも、すべて、あたしが請け負える。
きっと、そのために、この瞳を託された。
一緒に、戦おう。
すべてぶつけに行かなくちゃ。
これは、時を経た、弔い合戦。
「ひとみ」
「うん! 魁運、行」
「髪、短いのも似合ってる」
「こう……って、ええ!? 今それ言う!?」
「今言いたくなった」
「や、やや、やる気出すぎて、手加減できなくなっちゃうじゃんかー!」
「それは敵にわりぃことしたな」
あ、わざと? もしかしてわざと!?
確信犯だな! もうっ! かわいい真似しちゃって!
調子の戻ってきた魁運に、もっとかわいがってもらうにはどうしたらいい!?
……ちゃっちゃと決着つけるしかない、ね?



