「あ、れは……」
あでやかに波打つ、長い髪。
ゆるやかに歪んでいく、赤い口。
魁運と似た、きれいな顔立ち。
洗練された女性の姿となったあの面影は、あたしを見て、目を細めた。
「スイレン、さん……?」
きっとそうだ。
会ったことなくてもわかる。
あれが……あの人こそが、巫女だった、魁運の母親で。
そして、また。
あのときみたいに、忍び寄るあの白い手が、魁運の首を――。
「ま、待って! スイレンさ……っ!?」
首を、絞め――……ちがう。
あの手は魁運の首にやさしく回され。
魁運を……いとしの息子を、抱きしめた。
彼にすり寄ったスイレンさんは、ひどく哀しそうに泣いている。
ほろほろと涙をこぼして。
「……っ、か、ぁ、さ……」
「! 魁運……スイレンさん……」
やっと、解けた。
伝わってきた。
あなたの想いが。
あたしにも半分だけ巫女の血が流れてるからかな。
「そう、だったんだね……。スイレンさんは魁運の……」
呪い? 怨霊? バケモノ?
そんなんじゃない。
暴走していたのは魁運自身で。
そんな彼をあの霊が……スイレンさんが、抑えようとしていた。
そう、彼女は息子を護る、守護霊そのもの。
「あたし……あたしも、魁運のこと、守りたい」
スイレンさんに導かれるように、あたしも魁運を抱きしめた。
彼の胸元で揺れる、スイレンの花の咲く小瓶に、手のひらを重ねる。



