あのお守り……せっかくおじ様が丹精こめて作ってくれたのに。
今にも破裂してしまいそう。
名前を呼んでも返事はないし、気持ちばかりはやってしまう。
どうしたら、あなたとおなじになれる?
「魁運……かい、うん、あたし、」
「……っ」
「ッッ!」
魁運に触れようとしたとたん、バチッ、とはじかれた。
今の、静電気……?
まるで拒絶されたみたいで、なんか、苦しい。
あたしがわかりたい、苦しさとは、ちがうんでしょう?
「魁運……!」
――……ッパァァン!!
……え?
ピアスが……刺繍されたお守りが、破れた!?
その瞬間。
風の流れが、変わった。
「キャーーーー!」
「風、つ、強……っ」
「目に砂が……!」
「た、台風!?」
薄紅と銀の刺繍糸が、無残にも舞い散る。
絶対零度をはらんだ向かい風に、体を持ってかれそう。
うつむきながら手探りで腕を伸ばした。
ここで魁運のそばを離れるわけには……!
必死になって魁運の手を握り締めた。
バチバチと、また静電気が走る。
が、どうだっていい!
離さない。
離しちゃいけない!
刮目しろ、あたし。
風が痛いからって、背けるな。目を開けろ!
傷ついてでも愛せ!
「かっ! ……い、うん……?」
大きな背中を染める、鮮やかで、透明な、黒。
……ううん。
もう黒じゃ、ない……?
あの黒すらも、透きとおっていく。



