想像できないもん。
あたしのためにうろたえて、汗水たらして必死に探す姿なんて。
父さんと兵吾郎以外はほとんど面識ないから、あたしの顔すらうろ覚えなんじゃないかな。
それでどうやって探すのよ。難題でしょ。
逆によく兵吾郎はあたしの居場所を突き止めたね。すごいよ。
「お嬢、信じてください。本当に、本当なんです」
ぐっと右手首をつかまれた。
「組長も、早く帰ってくることを願って」
「帰ってもどうせ、また閉じこめるんでしょ。知ってるよ」
「お嬢……」
兵吾郎は、否定しない。
へにゃりと眉を下げ、もどかしそうに口ごもるだけ。
ほらね。
だからあたしは逃げたの。
「父さんも兵吾郎も、みんな、誰ひとりとして味方してくれなかった」
軟禁がおかしいことは、はじめっからわかってた。
ときどき顔を合わせる妹だって、外に出て、学校に行って、いろんな人と会ってるのに、どうしてあたしだけ?
みんなだって、おかしいと感じるはずなのに。
どれだけ救いを求めても、いつも同じ。
『組長にも考えがあってのことっすから』
『気持ちをわかってやってください』
『部屋にいたほうが楽だろう』
考え? 気持ち? 楽?
あたしの考えは? 気持ちは? 気楽さは?
『お嬢のためなんです』
ふざけるなよ。ぜんぶ無視しやがって。
「誰があたしの味方になってくれるの」
「……っ」
「――あたし自身しか、いないでしょう?」



