「お嬢! 起きたんですね!」


「……兵吾郎」




オトメの部屋にノックもなしで入ってくるとはいかがなものか。

あわただしいにもほどがある。


今のあたしは軽いパニック状態なんだ。静かにしてくれ。




「お体は!?」


「は?」


「ご気分は!?」


「あ?」


「お熱は!?」


「はあ?」




とち狂ったようなテンションで、おでこをくっつけられた。


大真面目に感動の再会ムードを出されても困る。

こっちはちっとも納得してないってーの!




「熱は下がったようで……」


「ふんっ!!」


「っい!?」




ゴッツン!と、渾身の頭突きをかましてやった。


あたしも痛いけど、兵吾郎のほうが何億倍も痛いはず。どんなもんだい。




「お、お嬢……っ、い、いきなりひどくないですか……」


「あいさつだよ」


「俺はただ心配して……いってぇ……」




傷の増えたその顔。

着古された濃い藍色のスーツ。


相変わらず、なんて毒々しい。



目覚め一番に見るもんじゃない。




「これはどういうこと」




さっさと吐け。

返答次第じゃ……わかってるよね?




「お嬢、怖いです……」


「いいから教えて」


「は、はい……! お嬢が山にいるとのことだったので、何かあったら危ないと思い、救助を」


「救助ぉ? ああ、そういえば、誰か駆けつけに来ていたような……。それが兵吾郎だったの」


「あ、いえ、俺ではなく」