だけど。
やっぱり。
「カイウンさん、わたし……」
「わりぃな」
ちがうんだよ。
ひとみのくれる言葉も、表情も。
ぜんぶがぜんぶ、いい子ではなかったけど。
だから、キた。
胸をぐっと捕まれた。
ひとみだからいいワケしか、そこにはなかった。
「俺はひとみのもんなんだ」
ひとみの妹相手だから、できるだけやさしく腕をほどいた。
沈黙が漂う。
静かに横をとおり過ぎると、パーマがかった長い髪がなびいた。
「何を、」
「……?」
「何をお祈りしたんですか」
最後にそれか。
何か勘づいてやがるな。
ひとみに会いに行くって教えたせいか?
「ナイショ」
首をうしろに回し、不敵に笑ってみせた。
彼女の顔はよく見えなかった。
白のロールスロイスの駐車された鳥居を横切る。
そんな俺の背中を、彼女は呆然と眺め続けていた。
「……つれないなあ」
簡単に言えっかよ。
俺の願いは安くねぇんだ。
口にするのもむずかしい、一世一代の想いごと、神様に誓いを立てた。
ひとみが幸せになりますように、と。



