集会でしか、ちゃんとしゃべったことないし。
特別なことはなんもしてない。
『ウチは基本、仲間には激甘だから、信頼を得たら勝ちだよ』
いつの間に、俺も、仲間にしてくれていたんだろう。
「……っ、おせっかいだな」
「ふふふ。人情の厚いチームでしょ?」
自慢げだな、繭のヤツ。
そりゃ誇らしくもなるよな。
分厚すぎて、俺もくるまれちまったよ。
「だが、乗りこむのは俺ひとりだ。そこはゆずれない」
「はいはい、どうぞお好きに。行きたきゃひとりで行けばいいわ。だけどね、何もかもカイだけで背負っちゃだめよ? サポートは任せなさいな」
「……ああ、ありがとな」
「ま、そもそも、入手してる情報量が少なすぎて、今行っても無駄骨を折るのよねぇ」
会うだけにしても、必要な情報は山ほどある。
拠点の位置、交通量、組員の配置、家の間取り……。
最低限の内容でさえ、つかめきれていないらしい。
神亀にしては慎重に調べている。
それもそうか。繭たちだって、白雪組と殺り合いたくはないよな。
「せめて拠点の詳細をつかむまで、しんぼうしなさい」
「じゃあ俺も何か……」
「カイはよく食べて、よく寝ること! ひとみんとは万全な状態で会いたいでしょ?」
ぐうの音も出ない。
た、たしかに、こんなへなちょこな俺を見て幻滅されたくねぇ……!
黙ってうなずけば、繭だけじゃなく、下っ端のヤツらにも笑われた。
「1週間」
「え?」
「1週間だけちょうだい。神亀総出で本気になって、なんとか集めてみせるわ」
白雪組が車でさらったってことは、銃やら刃物やら使う可能性は低い……よな?
ひとみの命の危険は、ない、はず。
1週間の猶予は、大丈夫……と信じたい。
本当は今すぐに会いに行って、連れて帰ってしまいたいけれど。
それは俺のエゴに過ぎない。
最後は、俺の世界の中心で、ひとみがまた笑ってくれるなら。



