死んでもあなたに愛されたい




もはや傘は何の意味もなしてなかった。


ノーセットの髪はぺちゃんこ。

使い古した靴はとうにぐしょぐしょ。


走りづらくて仕方ないが、走らなくては。



死神だと気づいたとたん脇にそれていく通行人たちを気にも留めず、はやる気持ちのままに雨にあたりに行った。




街はずれに、巨大な倉庫が見えた。

何台ものバイクがところかまわず置かれてある。


ただならぬ危うさをかもし出している。




「繭。繭、いるか!」




コンクリート構造の中へ、俺はためらいなく踏み入れた。


殺風景な入口。

奥にいくにつれ、好き勝手改造されている。



「あら、カイ!」

「死神パイセンじゃないっすか~!」

「今日は集会じゃないっすよ?」



ぞろぞろとカラフルな頭のヤツらが現れた。

先頭に立つのは、ここのボス。



繭の率いる暴走族、神亀。


そのたまり場が、東にあるこの倉庫。



俺がここを訪れるのは、きまって集会があるとき。

それ以外はめったに来ない。


が、今回は緊急事態だ。




「幽霊部員のカイが遊びに来るなんて、今降ってるのは雪なのかしら」


「雨だっつの」


「あらそう? それより体調はもういいの? 学校も休んでたって聞いたわよ」


「さっき治った」


「病み上がりなんじゃないの。まだ寝てたほうがいいんじゃない?」


「……寝てられっかよ」