「そのひとみちゃんは? 学校から帰ってきてただろ?」


「……、ん」


「……ひとみちゃんと何かあったのか」




親父にはなんでもおみとおしだな。


そうだよ。あった。

俺が、やっちまった。




「ふたりが仲たがいするなんて初めてじゃないか。ケンカするほど仲がよくなったということかな」


「ちがう。俺が勝手に……」




自分のことでいっぱいいっぱいで、ひでぇ言い方をして突っぱねちまった。


あんなん追い出したも同然だ。



ほんと、ガキみてぇだ、俺。




「……ひとみが言ったんだ」


「なんて?」


「俺に憑いた、幽霊は……俺の実母だ、って」


「え……」




雨のにおいも相まって、前頭葉がひしゃげてしまいそうだった。




「それで、俺……っ」


「……そうか、やっぱり……」


「お、やじ……?」




やっぱりって……。

なんで。



ピアスの飾りが小さくぐらついた。




「ひとみちゃんはね、幽霊に愛されているんだよ」


「は……? それはどういう……」


「わたしのごくわずかな霊感でも、鮮明に感じ取れるくらい、ひとみちゃんの周りだけが異質だった。ひとみちゃんの言動に、幽霊が一喜一憂しているように見えたんだ」




ああいうのを見たのは初めてだったよ、と親父は含み笑いをする。