こんなあたしに、何ができるだろう。
何をしてあげられる?
あたしも、お守りみたいになれたらよかった。
魁運の左耳に付け直した、ひとつのピアス。
赤い飾りに、白い刺繍糸でかたどられた一輪の花。
その花の名前を、おじ様に教えてもらった。
――スイレン。
花言葉は、清らかな心。
けして汚れてしまわないように。
ずっと咲きほこっていられるように。
魁運の心は、守られていた。
今もなお、ぼやけて浮遊する、黒い影から。
「幽霊さん……あなたは、」
あの日見た、呪いらしきソレの正体。
お守りがあっても彼のそばを離れないワケ。
あたしに、できること。
お守り代わりにはなれないかもしれないけど。
魁運の苦しみをすくい取ってあげられたら……。
「……んん」
「! 魁運……!?」
今、身じろいだ?
ちょっと動いたよね!?
魁運! 魁運!
あたしの声、聴こえる?
叫ぶように呼びかければ、か弱げにピアスが揺れ動いた。
「っ……ひ、と……み……?」
かすかに光の差す眼。
かすれて音にならない声。
でも。
それでも。
どれも、ぜんぶ、あたしへのもの。
「魁運んんんん!!」
「うっ……。い、いきなりのしかかるなよ」
「だってぇ~~……っ」
がまんできなくて、つい抱きついちゃった。



