あたし自身がこうなるきっかけになってしまったから?
だから今回はあたしの声だけじゃ、どうにもできないの?
「魁運、あたしの声を……!」
あっ!?
魁運のピアスが落ちちゃう!
霊を抑えるお守りが……!
あわててキャッチした、そのとき、風圧が増した。
敵に向かって刺すように吹き荒れる。
不透明だった気配が、魁運を飲みこんでいくにつれ、明瞭になっていく。
長い髪。
ゆるく歪んだ口。
そして。
魁運の首にかけられた、白い手。
「……女の、人?」
顔立ちが少し魁運に似ているのは、気のせい?
もしかして――。
チカチカと街灯が点滅する。
鬼気迫る、あの黒に、侵されていく。
あの手で魁運を絞め殺そうとしているなら。
そうなる前に、あたしの手で。
先手を打つ!
「声がだめなら……!」
グイッ、と魁運の胸ぐらをつかんだ。
力いっぱい引き寄せ。
数センチの背伸びをして。
――チュウ。
子どもじみた、へたっぴな接吻。
ずっと大事にしてきたファーストキス。
もってけドロボー。
あたしの大きな愛で、正気を戻して。



