って、あたしのことより魁運!
魁運にケガは!?
あたしに押し倒されている魁運の体を、ここぞとばかりにぺたぺた触って、外傷チェック。
いい体してるなぁ……。
コホン、ではなくて。
ケガなし! 出血もなし!
「傷なくてよかった……」
「……傷、ついてんじゃねぇか」
「へ?」
魁運の親指が、右頬の傷口をなぞった。
ぴりっと痛覚が走る。
その親指の腹が、赤く染まっていく。
「なんもよかねぇよ」
「かい、うん……?」
「は……は、ハハッ! 死神のヤツ、女を盾にしやがった! うわさ以上にやべーヤツみてぇだな!? その女、呪われんじゃね?」
だから空気読めって、天狗鼻。
その空っぽな脳みそ、ミキサーにかけてやろうか?
あたしを盾にしたんじゃなくて、あたしが志願して盾になったの。守りたかったの。
誤解すんな。
「やべーのはあっち……だ……って、」
「嗤ってんじゃねぇ」
「……、え、かい」
魁運、どうして。
一番きれいな白を、自ら、陰らせているの。
大きな背中を抱え込む、ひときわ黒い影。
どんどん色が濃く、まがまがしくなる。
ヘルメットも、お店の看板も、周囲の人々もガタガタと震えていた。
だめだよ。
あんな挑発に乗っちゃだめ。
あたしの声を聴いて?
「魁運! ねぇ魁運!」
「あの男のせいで……」
「魁運!!」
魁運には何も聴こえてない。
こんなに近くにいるのに。



