白鳥家の巫女は、代々、短命だ。
人間の域を超えた、言霊。
言葉に魂を宿す、その力には、ワケがある。
発動させるたびに、寿命を削られていくのだ。
まるで神様に成り替わろうとしているように。
そうして、人々は、口をそろえて崇め謳う。
――あぁ、彼女こそが、神の代弁者だ、と。
だから、つぅちゃんは、愛と安全の代わりに自由を捨てた。
捨てざるを得なかった。
少しでも生きていたくて。
「泣かないで、ひぃちゃん」
「……泣いてるのは、つぅちゃんのほうじゃん」
ぽろぽろ泣いてるせいで、メイクが崩れてるよ。
すっごくかわいかった顔が、ちょっとかわいいにランクダウンしちゃってる。
神様のこんな素顔、お客さんにはナイショだね。
前天冠をはずしてあげると、あたしの胸に泣き顔をうずめた。
「……ごめんね、」
あたしの霊力と、つぅちゃんの言霊。
元は、ふたつでひとつの異能だった。
あたしたちが双子に産まれ堕ちたせいで、巫女の力は分かたれた。
きっと本来ならば、お姉ちゃんであるあたしが、背負うべき宿命だっただろうに……。
「つむぎ様は……!?」
「ひとみ!」
「ひとみん、どこに……」
「しぃー」
あわただしく駆けつけた赤羽くん、魁運、マユちゃん先輩。
唇に人差し指を置くあたしに、3人一斉に口をつぐんだ。
すやすやと寝息が立つ。
あたしにもたれかかって眠るつぅちゃんの背中を、ぽんぽんと撫でた。
おつかれ様。
おやすみなさい。
あたしのかわいい妹よ。