魁運とマユちゃん先輩が移動し、あたしも人目につかないように舞台裏に向かった。
そこには赤羽くんが待機していた。
何やら電話越しに話しこんでいる。
「見つかりましたか? できるだけ早くお願いします。でないとつむぎ様が……」
たぶん銃のことだ。
赤羽くんも早々に気づいて行動していたんだ。
とっさに彼の袖をひっつかんだ。
「っ! ひ、ひとみ様……!?」
「神社裏手、ふたつ道をはさんだ先の南側のビル、10階の左から4番目の部屋」
さっき見渡したときに発見した、撃ち抜く係の居所。
いちいち説明してられない。
事態は一刻を争う。
これで伝われ!
「っ、承知!」
一拍遅れて、赤羽くんは地を蹴った。
と同時に、あたしも走り出す。
つぅちゃんのカバンから使えそうな道具を抜き取り、颯爽と舞台に駆け上がった。
扇で顔の半分を隠すつぅちゃんと、目が合った。
ヘーゼル色のその瞳が、限界まで丸くなる。
あたしは好戦的な笑みをこぼした。
ここは、あたしが。
あたし自身と妹を、守り抜く!
ふわっ、と、持ってきたもの――薄紅色のヴェールを、軽やかにはためかせた。
「わあっ!!」
「幻想的……」
「すてき〜!」
演出に見えたならヨシ!
異常事態だとはこれっぽっちも気づかれてない。
色付きのぼかし効果で、犯人からはよく見えなくなっただろう。
どっちがどっちかわかるまい。



