あたしの目に、色はない。
白色ともちがう。
たとえるなら、海。
海面に空の色が反映されるみたく、あたしの目も相対するものに染まる。
彼の、色素のうすい茶色に、染まっている。
動き、揺らぐたび、あたしの双眼は彩りを変えていく。
透明で、不透明。
あたしの名前と同じ、ふしぎな瞳。
「……もっかい」
「ん?」
「もういっかい、言って?」
あぁ、どうせなら。
「あんたの目、きれいだよ」
ずっと彼だけを見て、彼の色に染まっていたい。
きれいだと言われ続ける、瞳でありたい。
「ほめられたの初めてで……。ありがとう、ございます……」
「俺も素直になってみただけだ」
ズキュン、って音した。
心臓で太鼓を打ち始めた。
出会って1時間も経ってないうちに、こんなにトリコにさせちゃうなんて、罪な男だよ! もう! 天然タラシか!?
ギルティー。有罪です。あたしの牢獄に閉じこめちゃうぞ。……冗談です。
「それが原因か?」
「原因って?」
「行き倒れてたワケ」
「全然! これっぽっちも! まったくもって! 関係ないです!」
勢いよくブンブン頭を左右に振れば。
手当てしにくい、と両頬を押さえられた。
彼の、手……! 手がほっぺに触れ……!
スキンシップ最高。手当て最高。
傷よ治らないで。



