――ドスッ!
「もう……やだ……」
お願いだから。
――ガンッ!!
「わたしのせい……なら……」
どうか、あたしに。
「これ以上……傷つけさせない!」
「つぅ、ちゃ……?」
護られていてよ。
「――止マリナサイ!」
つぅちゃんの声に、異質な膜が張る。
空中を波打ち、敵の鼓膜をとおり抜け。
脳内に直接響いていく。
「!? な、なんだ……?」
「か、体が……っ」
「う、動かねぇ!」
「どうなってやがる!?」
「まさか、これが、あの……!?」
硬直した敵の拘束は、もはや何の意味もない。
つぅちゃんは涙を拭い、自らの手でナイフを取っ払った。
乾いた唇をなめる。
その白い舌先に、また言葉が乗る。
「――頭ガ高イ。下ガレ」
瞬間、男たちは言葉どおり、従わざるを得ない。
否応なしにあたしたちから離れ、地面にへたりこんだ。
……これ、は。
ひさしぶりに、見た。
もう見ることはないと思っていた。
妹の、ふつうではない力。
選ばれたワケ。
白鳥家の巫女に受け継がれる――言霊。
言葉に魂を注ぎこみ、現実にさせる。
おそろしくも、残酷な、優れた力。
つぅちゃんの舌の先に色がないことが、神様の言葉を司る者の証。



