別ルートから忍び寄ってきたのだろう。
バカなりに頭を使うとは、やってくれる。
じり、と近づけば、ナイフの先がつぅちゃんの皮膚をつっついた。
「それ以上近づけば……わかるよな?」
「……わかんないなあ」
どうなっちゃうの?
目的があたしだろうと、つぅちゃんだろうと。
どうせ殺しはしないくせに。
ワケありなあたしたちは、生け捕りが基本。
神様にたたられたくないでしょう?
「な、なまいきな女だ。やっちまえ!」
「おりゃあああっ!!」
親の仇でも討つみたいに拳を振るわれる。
顔をガードした腕にクリティカルヒットした。
最っ悪。アザが残っちゃうじゃん。
「ひぃちゃん……!! やめて……っ!!」
「ハハッ。こっちの女はなかなかそそるな」
きっしょ。
ボソッとつぶやいたら、聞こえてしまったようで。
さらに敵の暴行が激しくなった。
あいつ、地獄耳か?
「ひぃちゃん……っ、わ、わたしのことは、いいから……だから……」
なに言ってるの、つぅちゃん。
これも、あれだ、作戦のうちよ。うんうん。
防御はカンペキ。
顔に傷はひとつもついてない。
で、油断したときに、こう……ささっとナイフを取って。
一矢報いる!
そういう算段。
いける、いける!
ほら、地味に冷気が立ち込めてるのわかる?
もう少ししたら、幽霊さんたちがドバア!と何かやってくれるから。
ちょっとはお姉ちゃんにいいカッコさせてよ。



