ひじまで腕まくりをして、黒ずんだ世界を瞳に映す。
凍てついた追い風が吹きこんだ。
「遊んでやんのはこっちだよ!」
「手加減してやっからよ」
「ちょっとくれぇいじめてもいいよなぁ?」
「おい! おめぇら、気ぃつけろ! そいつは、」
――危険だ。
「グアッ!?」
モヒカンの鼻の骨を、へし折り。
「アブォッ!?」
柄シャツの身を、壁にぶち当て。
「ゴホ……ッ!」
金歯のみぞおちを、深く殴って。
もういっちょ!
最初に蹴り飛ばした男のほうへ、3人まとめて投げ倒した。
ストラーイク! なんつって。
「いきがる雑魚ほど、あわれなものはないよね」
「くっそが……!!」
モヒカンがへこたれず、殴りかかってきた。
おうおう、元気がいいこって。
長引くのもよくないし、さっさとケリをつけて……。
「ッ!?」
うしろに気配を感じる。
悪意めいた、人間の気配。
モヒカンの拳を難なく受け止めてすぐ、つぅちゃんの安否を確かめる。
「ひ、ひぃちゃ……っ」
「こっちの女はいただいたぞ」
案の定、敵がもう1人。
つぅちゃんの首にナイフを突き立てていた。



