エンジンはそのままに、ヘッドライトが消された。街灯はないらしく、とたんに暗闇が広がる。

「ここさ、星が綺麗なんだよ。穴場スポット」

「……そうなの?」

先程とはうって変わって急に優しい声色で話す高志に、私は少し落ち着きを取り戻した。

「葵、星好きだろ?」

「うん、好き」

私はフロントガラスから空を仰ぎ見る。
ガラス越しからでも確認できる無数の星は、街中で見るものとは全然違った。

”星が綺麗な穴場スポット”

高志の言葉がよみがえる。
だから連れてきてくれたんだと思うと急に嬉しい気持ちがわきあがり自然と頬も緩んだ。
なんだかんだ言いながらも、私を喜ばせようとちゃんと考えてくれてたんだ。

車から降りようとドアノブに手を掛けると、ぐっと体を引かれて高志にもたれかかる形になった。
顎をぐいっと引き寄せられて、そのまま唇が重ねられる。腰に手を回され更に体が密着する。と同時に、キスも深くなっていった。

そのままゆっくりと座席にもたれ掛かった。高志は私に覆い被さるように体を捻り、座席が倒される。おもむろに服の上からまさぐるように手が触れていき、ゾワゾワした気持ちになった。とたんに耐えられなくて、私は顔を背けながら「やめて」と拒んだ。それなのに高志は聞こえないとばかりに触る手をやめない。

高志と体の繋がりはまだない。
キス止まりだ。
チャンスは何度かあったけど、私の心の準備ができなくてずっと拒否していた。

───初めては怖いから。
───わかったよ。

そうやり取りしたときの高志はとても優しかった。

私の気持ちは分かってもらえてると思っていた。だから今までもこれからも、ちゃんと私の気持ちを尊重してくれるものだと疑っていなかった。

なのに今?
ここで?
なぜ?

彼に対する不信感が身体中からわきあがってくる。