星が綺麗な夜だった。
雲もなく澄んだ夜空。
数えきれないほどのたくさんの星たちが、キラキラと煌めいている。

こんなにたくさんの星を見たのは初めてかもしれない。明かりがない夜空はこんなにも幻想的で素敵なものだと、初めて知った。

キラッと瞬いて星がひとつ線を描いた。

「流れ星?」

目を凝らしてよく見てみる。
静かな光景が尚更静かになった気がした。

キラッ

また星が瞬く。

「素敵な人と出会えますように!素敵な人と出会えますように!素敵な人と出会えますようにっ!」

急いで胸の前で手を組んで流れ星に向かって早口でそう叫ぶと、とたんにぎゅうぎゅうと胸に込み上げるものがあり、私は思わずその場にしゃがみこんだ。
よくわからない感情は、怒りと悲しみと悔しさが入り交じっていて、気持ちをぐちゃぐちゃにする。

“次”は素敵な人と出会えますように、が正解だ。

自分の願いにツッコミを入れて、すぐさま首を振って否定する。

いや、違う。

望むべき事はそれではない。
今大事なことはそこではないのだ。
今大事なことは……。

「はぁ、どうやって帰ろう」

夜空を仰いだ呟きは耳をかすめていき、更に自分の胸を苦しめた。