ダダダダダッ…
バン!!
騒音を立てながらリビングに戻ってきたのはもちろん兄ちゃん。
俺は何もなかったように、またソファに座り直した。
「宮~」
円さんは兄ちゃんにパタパタと駆け寄っていく。
ほらな。
どうせ女なんて、彼氏の前じゃ弱い子ぶる。
さっきのもちょっと天然キャラ演じただけだろ。
今に「弟くんに襲われた」とかチクるんだ。
「円、なんもされてねぇだろうな。」
「え、うん。」
『うん』!!?
「そんなことより」
『そんなことより』!!?
「宮、髪乾かさないと」
どーーーーでもいいわ!!
え?
本当に本気?
この人、ガチで病んでる系?
「あー、慌ててたし。」
「エヘヘ。」
「何笑ってんだアホ。
乾かしてくる。」
「あ、待って。」
兄ちゃんは久々に見る穏やかな顔で振り返った。
心から円さんが好きなのが、気持ち悪いくらい伝わる。
円さんは無表情のまま言った。
「私が乾かしてあげる。」
「…兄ちゃん!!!」
俺の大声に反応して、
兄ちゃんはキョトンとした顔でこちらを見た。
円さんの目はギラギラ光っているように感じる。
なんか怖くて見れないけど。
「危ない…よ?」
「危ない?何が?」
「その…」
その女、変態だぞ。
「……。」
俺が黙っていると、兄ちゃんはプッと吹き出して笑った。
こんな楽しそうな兄ちゃん見るの久々だ。