それでも、奏先輩が名前で呼ぶ以外は、特に変わった態度を取ることもなかったので、それ以上の騒ぎになることはなく、一応、平穏無事に1週間を終えた。

私は、土曜日、奏先輩がうちに来るなり、詰め寄った。

「奏先輩! なんで、みんなの前で名前で
呼んだりするんですか!?
お陰で私がどんな思いをしたと… 」

「え、俺、美音って呼んでもいい?って
聞いただろ?」

奏先輩は悪びれもせずに言う。

「んーーー!!
そうだけど!!
みんなは誤解するじゃないですか!!」

私がいくら抗議しても、どうも奏先輩には伝わらないようで…

「誤解? 別にさせとけばいいんじゃない?
美音、誤解されて困る男子とかいるの?
彼氏とか、好きな奴とか… 」

「それはっ!
………いませんけど。」

「じゃあ、問題ないじゃん。
ということで、この話はおしまい。
早速、エレクトーンやろ。」

ダメだ。奏先輩には通じない。

奏先輩、自分がモテてる自覚ないのかなぁ。


その後はいつも通り、エレクトーンをして、勉強をした。


そして、終わりがけに奏先輩が思い出したように言った。

「そうだ! ユニット名どうする?」

「ああ! そうですね。奏先輩、付けたいの、
あります?」

「そうだなぁ。
美音と奏… 奏音(そうおん)じゃうるさそうだし…
みそ… みそ! 味噌ってどう?」

「ふふっ
味噌ですか?」

「覚えやすいし、よくない?」

奏先輩は身を乗り出して尋ねる。

「だったら、アルファベットにしません?
そしたら、音階のミとソに掛け合わせる事も
できますし。」

私は紙に書く。

MiSo

「間に何か入れましょうか。」

Mi−So Mi_So Mi☆So Mi♡So Mi♪So………

私はいくつか書いていく。

「音符はバランスが悪いですね。
ハートもかわいすぎますよね。」

そう言って、私が横線で消そうとすると、奏先輩が止めた。

「いや、別にかわいくてもいいんじゃ
ないか?」

「ええ!?
だって、ハートですよ?
小さい女の子のグループなら分かります
けど、奏先輩、こんなに背が高くてかっこ
いいんですから、かわいいじゃなくて、
かっこいい名前にしましょうよ。」

私がそう言うと、奏先輩の頬が見る間にピンクに染まった。

え、何?

「奏先輩?」

「あ、いや、美音にそんなことを言われる
とは思ってなくて… 」

そんなこと?

「うん、そうだな。
かっこいい名前にしよう。
っていうか、間には何も入れなくてもいいん
じゃないか?」

「そうですか?」

「うん。MiSo。決まり。」

「はい。」

ユニット名が決まったところで、奏先輩は帰っていった。


それにしても、なんだか最近、奏先輩、変じゃない?