白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
「おぅ!」

「うん!」


わたしたちにはこれで十分。

見つめ合うだけで、お互いの気持ちを伝え合える。


そのとき───・・



ウゥーーーーッ・・・・



試合開始を告げるサイレンが、球場全体を包むように高らかに鳴り響いた。


「行くぞー!」


稜ちゃんが先陣を切ってグラウンドに飛び出していく。


「オーッ!」

「オーッ!」

「オーッ!」


ほかのメンバーも、一斉に雄叫びを上げながら稜ちゃんの後に続いていく。


熱い暑い夏が始まった。

ここから始まるんだね。

ずっと続いていくよね。

わたしは、いつでもこうして稜ちゃんの背中を見守っているよ。

稜ちゃんが“天使だ”って言ってくれた、この微笑みをけして絶やさずに・・・・。


7年前のあの日、一緒に四つ葉のクローバーに誓った約束。


━“百合ちゃんを甲子園に連れてってあげる!”━


ちゃんと果たしてくれたね。

ありがとう、稜ちゃん・・・・。

本当に、ありがとう・・・・。