白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
それから・・・・。


「百合、ごめんな。ありがと」

「ううん」


ちゅっ・・・・。

優しいキスを、たくさん、たくさんくれる。


わたしがどれだけ幸せか、稜ちゃんはきっと買い被っているんだ。

“ごめんね”のキスより“好きだよ”のキスをしてほしい・・・・。

それがわたしの本音。


どこにも行けなくてもいいんだもん。甲子園に行けるだけでいいんだもん。

・・・・稜ちゃんと一緒にいられるだけでいいんだもん。

そんな気持ちでいること、少しでも稜ちゃんに伝わってほしいな。

キスをするたび、わたしはいつもそう思っているんだ。


稜ちゃんには、悔いのないようにめいいっぱい甲子園を楽しんでもらいたいから。

わたしは、一生懸命に野球に打ち込む、そんな稜ちゃんが一番好きなんだから・・・・。





「ねぇ稜ちゃん、稜ちゃんの“一番”って何?」


甲子園球場に向かう日があさってに迫っているという日───。

いつものように稜ちゃんが“ごめんね”のキスをしたあと、わたしはそう聞いてみた。