白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
「そんなに泣くなよ。先生が戻ってきたら俺が泣かせたって誤解されちゃうだろ?」


“だって”とごねるわたしに、稜ちゃんは少し焦ったように言う。


「りょ、稜ちゃんが泣かせてるんじゃないのよぉ〜。誤解も何もないよぉ・・・・。泣き止めって言うほうが無理だよぉ〜・・・・」


わたしの涙腺はもう決壊して崩壊ちゃってる。

しばらくは泣き止まない自信だってたっぷりあるもん。

稜ちゃんの困った笑顔を見上げながら、わたしは顔をクシャクシャにして泣いた。


「ホームラン打ったあとは泣かなかったくせに。・・・・かわいいやつだな、百合は」


えっ?

今、名前で呼んだ?

かわいいって言った?





ぎゅうぅっ・・・・。





ほんの一瞬のことで、頭の回転が状況についていけなかった。

だけど、稜ちゃんの口から出た言葉に“えっ?”と思うのと、あのコロンの匂いをふっと鼻に感じたのがほぼ同時。

わたしは、いつの間にか稜ちゃんの腕の中にいた。

今わたし・・・・遠かった稜ちゃんに抱きしめられてる。