それはそれは、きれいな放物線を描いて空に吸い込まれていった。
真夏の空の中へ、真っすぐに、少しもためらわず、ただただ上だけを目指して飛んでいった。
わたしの耳には、不思議と何の音も入らない。
静寂を裂いて飛んでいくボールの音以外は入らない。
応援席のほうからは、徐々に歓喜の声が上がりはじめた。
ベンチのメンバーや笹本先生は、口をポカンと開けたまま。
まだこの状況が全く飲み込めていない様子で、まさに“放心状態”だった。
そしてわたしは───・・
「稜ちゃん・・・・稜ちゃん・・・・おめでとう・・・・」
それしかもう・・・・。