白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
そして、やっとのことで野球場に着くと、大きくて真っ赤な夕日がわたしを待っていた。

その中にぽつんと小さな人影。

グラウンドの奥の草むらに、ユニホーム姿のままの稜ちゃんがしゃがんでいた。

その小さな背中が、わたしには泣いているように見えて、なんだか心が苦しかったよ・・・・。





わたしは、弾んだ息を整えながら恐る恐る稜ちゃんに近づいた。

稜ちゃんは、わたしには全然気づいていない様子。


「・・・・稜ちゃん?」


後ろから声をかけると、稜ちゃんはビクッと反応した。

でも振り返らない。


「・・・・もうすぐパーティー始まるよ? 一緒にケーキ食べよ?」


そう言ったけど稜ちゃんは無言。

地面に生えた草をじっと見つめているだけだった。


「稜ちゃん、帰ろ?」


今度は稜ちゃんの隣にすとんと腰を下ろして、顔を覗き込むようにして聞いてみた。


「・・・・百合ちゃんごめんね。僕、試合勝てなかったよ」


すると、いつもは元気いっぱいの稜ちゃんが、すごく苦しそうに、悔しそうに声を絞りだした。