稜ちゃんのあの感じは、友だちと遊んでいるようには思えなくて。
自分でもよく分からないけど、このときのわたしは直感的に探しに行かなきゃって思った。
稜ちゃんのお母さんが帰って、わたしのお母さんがまた料理を作りにキッチンへ入ったのを見計らって、そっと家を出た。
「どこ行くの?」って呼び止められるのも嫌だったし、訳を聞かれたらなんだか恥ずかしいしで。
引っ込み思案な性格だから、あの頃からそうだった。
お父さんは幸いまだお昼寝中で、家を抜け出すには11歳のわたしでも簡単だった。
それからわたしは、昼間に試合があった野球場まで走っていった。
きっとそこにいる、絶対そこだ、ってそう思って。
陽が落ちてきた夕方でも、ムシッとした暑さが残る空気。
真夏の太陽の熱をいっぱい吸ったアスファルトの熱気。
吹く風もなま暖かくて、走ってからまもなく、わたしの額には汗がにじんだ。
でも、わたしは走るスピードを落とさなかった。
ただただ稜ちゃんが心配で。早く稜ちゃんの顔が見たくて・・・・。


