白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
結局、この日の試合は引き分けに終わった。

炎天下のもとでの試合だったから選手たちの体調も考慮してのことだった。

白黒はっきり勝負をつけたいところだったと思うけど、熱中症になっては元も子もない。

延長戦もやらず、力が均衡したまま、四つ葉対北星の練習試合は終わりを迎えた。

現に、選手たちもわたしたち観客も、あまりの暑さにヘロヘロになりかけていたから、仕方のないことだった。


でも、稜ちゃんだけは・・・・。

稜ちゃんだけは違っていた。


試合が終わって、両チームがあいさつをしにグラウンドに並ぶ。

なぜかその間も稜ちゃんから目が離せなかったわたしは、今度はその後ろ姿を見失わなかった。

その背中は誰よりもガックリとうなだれていて、引き分けたはずなのに負けたようにさえ見えた。


どうして負けちゃったときみたいなの? ねえ、稜ちゃん・・・・。

わたしは、このときは稜ちゃんが何のために勝ちにこだわっていたのか分からなかった。

だから、1人うつむいて両手をギュッと握っている稜ちゃんが不思議でたまらなかったんだ。