ほら。
今でもはっきりと。
こんなにも鮮明に。
頭に目に、心に焼き付いている。
忘れることなんてできない。
だってあれは、わたしが初めて切ない気持ちになった試合だから。
ダダダダダダダダッ!
ホームベースに頭から突っ込む稜ちゃん。
必死にベースにタッチしようとする姿が、健気で切なかったのをよく覚えているよ・・・・。
ボールはセカンドからキャッチャーへ、そしてそのグローブは稜ちゃんへ。
暑い日が続いていたせいで土はカラカラ。勝負が決まる瞬間、モワッと土埃が舞った。
──・・
────・・・
──────・・・・
「アウトー!」
ゆっくりと土埃が晴れていくと、主審のおじさんの声がわたしたちの耳に入った。
「くそっ!」
離れた位置にいたわたしでさえ、稜ちゃんがそう叫んだのが聞こえた。
それから、地面を悔しそうに叩く音も聞こえてきそうだった。
四つ葉側からは「あぁ〜」とがっかりした声、北星側からは「よく守った!」という歓声・・・・。


