それからの時間は、2人とも会話らしい会話はなかった。
お互いに気まずい空気が流れたままで、それを破る方法も、そのときのわたしは知らなかった。
館内のスピーカーから流れるゆったりとした音楽や、ガヤガヤする人の声を聞きながら、ただ稜ちゃんの後ろをついて歩いた。
稜ちゃんに連れられてお母さんたちと合流すると、お父さんもお母さんも稜ちゃんに「ありがとう」と何度もお礼を言っていたっけ。
そんな2人に、稜ちゃんは「ううん!」と照れくさそうに首を横に振っていた。
あのとき振り払ってしまった稜ちゃんの手、今ならわたしのほうから手をつなぎたいくらいなのに。
前に街で見かけたカップルのように、指だって絡めたいくらいなのに。
あのときのわたしは、どうしよもなく子どもで幼かった。
・・・・今でも大して変わっていないけどさ。
でも、本当にわたしは、ここ最近でずいぶん欲張りになっちゃったな。
・・・・稜ちゃんのせいだよ、これ。
なんてね。
ちょっと心でむくれてみた。


