白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
「稜ちゃ───・・」

「こっち!」


“稜ちゃん”と言う前にグイッ!と手を引かれた。

団体客が進む方とは逆の方向に、稜ちゃんがぐいぐい引っぱっていく。


「やっぱり百合ちゃん、ここにいたんだね。お母さんたち、すごい探してるから早く戻ろ?」

「・・・・」


わたしの手を引いてずんずん歩く稜ちゃんが言う。

その頃は、もう稜ちゃんを“男の子”として意識していたわたし。

しっかり握られた熱いくらいの手に・・・・“稜ちゃんの手”に、急に恥ずかしくなって何も言えなくなったんだ。


「あっちのクラゲのほうにお母さんたちいるから───・・」

「放して。一人で行けるから」


そんなわたしは、何か言いかけた稜ちゃんの手を思わず振り払ってしまった。

“もう迷子にならないように”とつないでくれた手だったけど、あまりにも恥ずかしくてついそうしちゃったんだよね・・・・。


「あ、ごめん・・・・」

「わ、わたしも───・・」


“ごめん”


それがどうしてか言えなかったんだ、わたし・・・・。