白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
あれよあれよという間に、イルカの水槽の前に人だかりができた。

昔から背がそんなに大きいほうじゃなかったわたしは、その団体客の中に紛れてしまったんだ。


「イルカ、かわいいわねぇ」

「そうねぇ。あっ!今、あのイルカこっち見たわよ!」


そんな声が頭の上で聞こえた。


そこの水族館は水槽がドーム状になっていて、天井を見上げれば、右へ左へイルカが行き交う姿が見られる造りだった。

水の中に入っている感覚を味わってもらいたい、というコンセプトがあったみたい。

わたしもさっきまでその口で、夢中でイルカが泳ぐ姿を目で追っていたんだ。

そんな展示スペースでは、見る人は上を見上げずにはいられない。

足元に誰か・・・・小学6年生の小さなわたしがいたことには、なかなか気づいてもらえなかった。


「痛い・・・・押さないでよぉ」


そんなわたしの声にも、誰も気づかないくらいだった。


だけど───・・


「百合ちゃん!大丈夫!?」


わたしを見つけてくれた人が1人だけいた。・・・・稜ちゃんだった。